昔から木造の建物は屋根に勾配(角度)をつけて、雨が軒先に流れる工夫がされていますがさしがねを使って勾配墨が付けられたからこそ難しい計算をしなくても効率良く、正確な勾配(角度)のある建物が造られてきました。
さしがねで角度を出す方法を知っていればDIYや日曜大工のあらゆる場面で利用できます。
さしがねの利用法から勾配(角度)の出し方について紹介します。
勾配とは
大工が表現する勾配とは角度の付いた傾斜を表しますが、角度(度数)で表さず、寸表示で表します。
メートル法以前から尺貫法で使われ、勾配をメートル法の度数で表すと中途半端な数字になり、今も寸表示で表現しています。
上がメートル法のさしがね、下が尺貫法のさしがねの目盛りで、10寸(1尺)が30.3センチになります。
さしがねの簡単な使い方については、さしがねとはで紹介していますのでご覧下さい。
さしがねは日本古来から伝わる大工道具の一つです。さしがねは指金、尺金、指矩、曲尺、曲金、壺矩などとも呼ばれています。大工さんが持っているのを見かけた方も多いと思うのですが 一見、何でもないL型定規ですが、使い方をチョット知れば魔[…]
勾配(角度)を出す
一般的木造住宅の瓦屋根でよく使われる4寸勾配で紹介していきます。
さしがねの長面を水平に置き、直角の短面の4と長面の10を結んだ線が4寸勾配となります。
2寸勾配であれば10:2 6寸勾配であれば10:6で結んだ線となります。
センチのさしがねも10:4の倍数であれば同じ勾配になります。
4寸勾配で結んだ線を4寸の平勾配と呼び、
さしがねの短面部分の線を4寸の返し勾配と呼びます。
返し勾配は水平に対して垂直になります。
最初の画像、三角部分の赤線が返し勾配で屋根の棟部分、破風板2枚の接合部分に当たります。
破風板等を高い屋根の上で加工する訳では無く、全て予め作業所で墨をつけ加工します。
材料に勾配墨を描く時には、さしがねの10と4を材料の側面か芯墨に合わせます。
さしがねの短面部分が返し勾配で長面部分が平勾配になります。
さしがねがある方は画像を見ながら板材か紙に描いてみて下さい。
DIYや日曜大工での勾配墨の利用法
物置やバルコニー、庇等の勾配屋根の作業や、建物の壁に勾配屋根を取り付ける場合に、タルキの返し勾配墨で予め切断すれば作業も楽で綺麗に出来上がります。
スロープ床や手すりの勾配墨、庇や棚に方杖と呼ぶ斜め受け材の勾配墨にも利用できます。
さしがねの長面部分と短面部分の数字を合わせれば、正三角形になり、45度の墨が描けます。
留め方を使えない場合や持ち合わせない場合に便利です。
45度切断する額縁、広い板や化粧板の切断墨にも知っていれば便利に使えます。
さしがねには未だまだ他の便利な利用法がありますので、次の機会に紹介します。
大工の親父からのワンポイントアドバイス
大工術の基本はさしがねを使いこなす事、紙や板に描いて理解しよう!